将棋 棋譜解説

森内俊之九段が逆転負け!?衝撃の結末の2局を解説!!

2016/12/02


将棋好きの方ならご存じの方も多い

森内俊之九段

あの羽生善治さんよりも先に永世名人(通算5期名人位に在位すると得られる)の資格を獲得した将棋界のトップ棋士なのですが、そんな森内俊之さんが大差をひっくり返されて敗れた対局が存在したのです!!

今回はそんな衝撃の対局2局を取り上げ、解説していきます!!

 

2016年第66回NHK杯 2回戦第2局 対斎藤慎太郎六段

 

この対局は2016年7月11日(日)に放送された第66回NHK敗杯将棋トーナメントの第2回戦で斎藤慎太郎六段と対戦した時のものになります。

斎藤慎太郎六段といえば関西の若手棋士で、その甘いマスクから女性ファンも多いことで知られる有望株の一角と評される棋士です。

自他ともに認める詰将棋愛好家でもあり、終盤力には非常に定評があります。

そんな若手強豪棋士を相手に、この日の森内俊之九段は角換わりの将棋でどっしりと構えます。

58手目森内九段が8六歩と仕掛けたところから開戦し、局面は一気に終盤へと移り変わります。

図1:58手目8六歩の場面

その後斎藤六段の緩手を逃さず、差を広げとうとう勝ちが近づいてきたか?という場面が訪れます。

図2:86手目森内九段が8六飛と指した場面

この時点では後手の森内九段の有利場面。評価値も後手の+800(技巧)となっておりこのままうまく指し進めれば後手が勝てるのではないかと言われていた局面でした。

しかし、実はこの9手後の斎藤六段の指し手の後、森内九段は投了します!!

この図2の後斎藤六段は8七歩打と指しますがここで森内九段は

7七歩成

と指します。

 

これが悪手で、この場面では飛車を一旦8四に引いて局面を落ち着かせてるべきでした。

ここでコンピューターの評価値も600点ほど斎藤六段に振れて形成は互角になります。

この歩を同桂ととるのですが次に森内九段が大悪手を指してしまいます。

この場面では3一銀打や5一歩打(コンピューター推奨の手で人間では指しづらい)などが候補手ですが、ここで

6六飛

と指します。

図3:6六飛の場面

これを同龍と取ってくれれば同角成として後手玉の脅威の龍を取り払うことができる&次の後手の7六歩などが異常に厳しい1手となるのですが、ここで1三角打という非常に厳しい1手が飛んできて、形成が一気に逆転します。

PCソフト技巧の評価値も一気に3000点も斎藤六段に傾きます。

ここ3手で3600点あまりの点数が動いたことになります。(通常1000点以上の差がついている場合は逆転は相当難しいとされる)

以下6六飛→1三角→1二玉→3一角成→同金→同龍の場面で後手の森内九段が投了となりました。

図4:投了図95手目同龍の場面

 

実は斎藤六段が85手目に7三と として後手陣の飛車を2筋から6筋へと動かしたことによってこの逆転劇が生まれたというのもありますから、純粋に森内九段のミスだけではなく、先手の斎藤六段のうまい指し回しが勝利を呼び込んだとも言えるでしょう。

手合割:平手
先手:斎藤 慎太郎 六段
後手:森内 俊之 九段

▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲7八金 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成
▲同 銀 △4二銀 ▲3八銀 △7二銀 ▲4六歩 △6四歩 ▲4七銀 △6三銀 ▲6八玉 △7四歩
▲5八金 △7三桂 ▲9六歩 △9四歩 ▲5六銀 △8一飛 ▲7九玉 △6二金 ▲3六歩 △3三銀
▲6六歩 △4二王 ▲3七桂 △1四歩 ▲1六歩 △5四銀 ▲4七金 △5二王 ▲2五歩 △6三銀
▲8八玉 △4二王 ▲6七銀 △5四銀 ▲5六歩 △4四歩 ▲5八飛 △3一王 ▲5五歩 △4三銀
▲5六銀 △8二飛 ▲5九飛 △6三金 ▲4八金 △2二王 ▲2九飛 △8六歩 ▲同 歩 △6五歩
▲同 歩 △7五歩 ▲同 歩 △5四歩 ▲6九飛 △5五歩 ▲6四歩 △5四金 ▲6三歩成 △5六歩
▲7三と △8一飛 ▲7二と △8三飛 ▲6一飛成 △7六歩打 ▲6八銀 △3九角打 ▲5九銀 △5七歩成
▲1五歩 △4八と ▲1四歩 △5九と ▲7三と △8六飛 ▲8七歩打 △7七歩成 ▲同 桂 △6六飛
▲1三角打 △1二王 ▲3一角成 △同 金 ▲同 竜
まで95手で先手の勝ち

 

 

2014年第27期竜王戦七番勝負第4局

 

この対局は、当時の森内俊之竜王に関西の若手糸谷哲郎七段(現八段)が挑んだタイトル戦「竜王戦」の第4局になります。

3局目までで森内さんの1勝2敗となっており、ここは絶対勝っておきたい一局でした。

この対局は後手の糸谷さんの中飛車から先手の森内さんが穴熊に組むというわりと珍しい戦型となりました。

序中盤はほぼ互角の様相でしたが、終盤に差し掛かるに連れて先手の森内竜王がやや押し気味となります。

途中形成の揺れ動きはありましたが、終盤の101手目森内竜王の7八金打(図1)の場面では先手優勢の評価が下っていました。

 

図1:7八金打まで

技巧の評価値では先手の森内竜王の+900点あまりとはっきりと先手が優位の状況でした。

その後数手も優位を維持して迎えた111手目

森内竜王は6四角(図2)と指します

 

図2:問題の6四角まで

この手が大悪手でした!!

自陣の角が飛び出したことによって後々の6八龍を許してしまう形となってしまいこれはまずいです。

 

実はここで6四角に替えて6二角打とやっていれば明らかに勝てていたのです!!

6二角ならば次に7二金と受けられた時に7一銀と打つことができ、9筋に玉をいかせて9五歩や7三金などの筋を狙って迫っていけば、後手玉はジリ貧に陥り、先手の勝ちとなります。

6二角の場合のその後の進行例を挙げてみると

△7二金打▲7一銀打△9三玉▲9五歩△同歩▲同香△9四歩打▲7三金△9五歩▲7三金△9五歩▲7二金△8四銀打▲8二銀)△9四玉▲9六歩打(図3)

までとなり後手受けなしとなります

 

図3:9六歩打まで

 

図2に戻り、6四角と指したたことにより、評価値が先手+1000から-800と後手優勢へと大逆転を喫します。

以下6二金打→6三銀打と進みます。

 

しかしこの6三銀打(図4)も悪手で後手勝勢へと形成が大幅に傾きました。

 

図4:6三銀打まで

この手に替えて7一銀打であればまだなんとか勝負は続いていたと思われます。

しかしその後後手の糸谷七段に的確に咎められ、134手の9九角打(図5)を持って森内竜王の負けとなりました。

 

図5:投了図

こちらも終盤での大逆転を許した一局でした。

先手:森内俊之
後手:糸谷哲郎

▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △5四歩 ▲7八銀 △3三角 ▲4八銀 △4二銀 ▲3六歩 △5二飛
▲6八王 △5五歩 ▲5八金 △6二王 ▲7九王 △5三銀 ▲7七角 △7二王 ▲3八飛 △8二王
▲9六歩 △9四歩 ▲8八王 △7二銀 ▲3七銀 △4四銀 ▲4六銀 △5四飛 ▲6七金 △6四歩
▲7五歩 △5二金 ▲8六歩 △6三金 ▲8七銀 △7四歩 ▲同 歩 △同 金 ▲7八飛 △7五歩打
▲7六歩打 △6五歩 ▲7五歩 △同 金 ▲6五歩 △同 金 ▲6八飛 △7四飛 ▲7六歩打 △7三桂
▲7八金 △5四飛 ▲9八香 △6四金 ▲9九王 △6五歩打 ▲8五歩 △6三金 ▲8六角 △5三銀
▲8八金 △3五歩 ▲同 歩 △6四銀 ▲2六歩 △8五桂 ▲4五銀 △5一飛 ▲3四歩 △2四角
▲2五歩 △3五角 ▲3八飛 △5六歩 ▲3五飛 △5七歩成 ▲6二歩打 △同 金 ▲4二角打 △5二飛
▲6四角成 △同 金 ▲5三歩打 △同 金 ▲5七金 △6三金 ▲5四歩打 △同 金 ▲同 銀 △同 飛
▲5六金打 △7九銀打 ▲6五飛 △7四角打 ▲6四歩打 △6五角 ▲6三歩成 △8八銀成 ▲同 王 △3八飛打
▲7八金打 △6三銀 ▲6五金 △5七飛成 ▲6八銀打 △5八竜 ▲7四銀打 △同 銀 ▲同 金 △7三歩打
▲6四角 △6二金打 ▲6三銀打 △6八竜 ▲7三角成 △同 金 ▲同 金 △同 王 ▲7四金打 △8二王
▲4六角打 △9三王 ▲6八角 △6六角打 ▲7七桂 △9七銀打 ▲同 香 △7七角成 ▲同 角 △8九金打
▲同 王 △7七桂 ▲8八王 △9九角打
まで134手で後手の勝ち

 

終盤は何が起こるかわからない!!

 

あの名人8期という輝かしい実績をお持ちの森内俊之九段でもこのような大逆転負けを喫してしまうことがあるんですね!!

 

※羽生善治さんが逆転負けを喫した2局を解説した記事もご覧になってみてください!!

羽生善治が大逆転負け!?まさかの敗北を喫した伝説の対局を解説!!

逆転劇も将棋の醍醐味の1つですので、負けてしまった当人は悔しいでしょうが、熱い戦いを見せてくれた将棋ファンは拍手を持って称えるでしょう。

ということで、今回は森内俊之九段が逆転負けを喫した珍しい対局をお送りしました!!



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