将棋 棋譜解説

怪物糸谷哲郎が強すぎる!?圧勝劇を繰り広げた伝説の名局を解説!!

2016/12/02


将棋界では「怪物くん」のあだ名で知られる関西の若手棋士

糸谷哲郎八段

2014年には森内俊之竜王から竜王位を奪取し、圧倒的な存在感を示した彼ですが、そんな糸谷八段が強豪相手に圧倒的な強さをもって勝利した伝説の名局が存在するというのです!!

今回はそんな名局の中から2016年に行われた2局をご紹介します!!

 

 

第64期王座戦 挑戦者決定トーナメント準々決勝対渡辺明二冠

 

この対局は2016年6月22日に行われた第64期王座戦 挑戦者決定トーナメントの準々決勝で渡辺明竜王・棋王と対戦したものです。

糸谷哲郎八段はトーナメント1回戦でA級棋士の深浦康市九段に勝ち順調な滑り出し

渡辺明竜王も、過去2度のタイトル挑戦の経験がある若手の有望株中村太地六段に勝ち盤石な滑り出しでした。

ですが、そんな好調な両者がぶつかったこの準々決勝は早々に決着がついてしまいました。

角換わり腰掛銀模様で進んでいったこの1局、互角の形成のまま中盤の66手目渡辺竜王が1八飛成と香車を取って竜を作った場面(図1)が訪れます。

 

図1:1八飛成まで

実はこの手が渡辺竜王の緩手で、この1手を糸谷八段は逃しませんでした。

糸谷八段はここで1二銀打(図2)と一気に踏み込みます

図2:1二銀打の場面

ここからの手順が実に鮮やかで実にこの8手後の75手で後手の渡辺明竜王が投了し糸谷八段が勝利を収めます。

1二銀打以下は、△同香 ▲同歩成△同玉 ▲1四香打△2二玉 ▲1一飛打△3一玉 ▲1二香成(投了図)となり渡辺竜王が投了しました。

投了図:1二香成まで

この局面は後手の受けなしの状態で、4一玉と逃げると2一飛成→3一香合→7四角(変化図1)とでられて、後の3三桂成から攻めがどんどん続いてジリ貧に陥ります。

変化図1:7四角まで

4一金と金を引いて玉の逃げ道を確保しようとしても同様に2一飛成から4二玉→3三桂成→同金→2五桂(変化図2)からの1手1手の寄せになります。

変化図2:2五桂まで

どちらの手順ににしても、後手側から先手に迫れる手段が全くなく、先手玉は安泰の状態です。

中盤から一気に終盤の終盤まで行き、一気の寄せを見せた糸谷八段が怪物と言われている所以を存分に発揮した1局となりました。

先手:糸谷哲郎
後手:渡辺 明

▲7六歩 △8四歩 ▲7八金 △3二金 ▲2六歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成
▲同銀 △4二銀 ▲3八銀 △7二銀 ▲1六歩 △1四歩 ▲3六歩 △6四歩 ▲6八玉 △6三銀
▲9六歩 △9四歩 ▲5八金 △5四銀 ▲7九玉 △5二金 ▲4六歩 △4四歩 ▲4七銀 △4一玉
▲5六銀 △3一玉 ▲6六歩 △7四歩 ▲3七桂 △3三銀 ▲4八飛 △4二金 ▲8八玉 △2二玉
▲6八金 △6五歩 ▲6四角打 △9二飛 ▲6五歩 △6三銀 ▲5五角 △5四銀 ▲6六角 △6二飛
▲2五桂 △6五銀 ▲同銀 △同飛 ▲1五歩 △同歩 ▲1八飛 △2七角打 ▲1三歩打 △1八角成
▲同香 △1九飛打 ▲5六角打 △6六飛 ▲同銀 △1八飛成 ▲1二銀打 △同香 ▲同歩成 △同玉
▲1四香打 △2二玉 ▲1一飛打 △3一玉 ▲1二香成
まで75手で先手の勝ち

 

 

第60回NHK杯準決勝第2局対丸山忠久九段

こちらの対局は2011年2月15日に放送された第60回NHK将棋トーナメントの準決勝で丸山忠久九段と対戦した時のものです。

これは当時相当話題になりましたのでご存じの方も多いかと思いますが、糸谷八段(当時五段)の差し回しをみていきましょう。

初手から▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲7八金 △3二金 ▲2五歩 △8五歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛
△8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲2八飛(図1)と進んでいきます。

 

図1:2八飛まで

典型的な横歩取りになるかと思いきや、糸谷五段は2八飛飛車を自陣まで引きました。

ここから激しい力戦模様の将棋になります。

△7六飛 ▲2二角成 △同 銀 ▲7七桂 △5二王 ▲8八銀 △8六飛 ▲8五歩打 △2七歩打 ▲同 飛 △8七歩打
▲7九銀 △8九角打 ▲9五角打(図2)

 

図2:9五角打まで

ここで糸谷五段の強手が飛び出しました!!一見6五桂と跳ねて後々の5三桂成から7五角打の王手飛車の筋を狙ったりするのかと思いきや、なかなか打ちづらい場所に角を打って飛車をとらえようとしました。

この強手に丸山九段も飛車を逃げず8八歩成と踏み込んでいきます。

以下8六角→7八と→6五桂と進みますが、ここで丸山九段が4二金打と指します(図3)

図3:4二金打の場面

 

これが悪手で6二銀ならまだこの先は長かったようです。

このスキを見逃さない糸谷五段は2八飛と自陣に飛車を叩きつけます(図4)

 

図4:2八飛車まで

この力強い1手が実は最善手で、丸山九段も以下7九と と攻め合いますが、この攻めは糸谷五段よりも遅く間に合わず、

2二飛成→同金→5三桂成となったところで丸山九段の投了となりました。(投了図)

 

投了図:5三桂成まで

以下同金で2二飛成→4二合駒→4一銀打→同玉→3二金打以下の1手1手の寄りとなります。

名人経験者の丸山九段という実力者をNKH杯戦の準決勝という舞台でわずか39手という超短手数で打ち負かしてしまったということで糸谷怪物伝説が誕生した瞬間でもありました。

 

先手:糸谷哲郎 後手:丸山忠久 

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲7八金 △3二金 ▲2五歩 △8五歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲2八飛 △7六飛 ▲2二角成 △同 銀 ▲7七桂 △5二王 ▲8八銀 △8六飛 ▲8五歩打 △2七歩打 ▲同 飛 △8七歩打 ▲7九銀 △8九角打 ▲9五角打 △8八歩成 ▲8六角 △7八と ▲6五桂 △4二金打 ▲2八飛打 △7九と ▲2二飛成 △同 金 ▲5三桂成 まで39手で先手の勝ち

 

 

今後も怪物伝説を期待!!

 

以上糸谷哲郎八段が怪物と呼ばれる所以のような強さを見せた2局を見てまいりましたが、現在でもその強さは健在で、今後も怪物じみた強さを発揮する名局が誕生することでしょう。

今後も糸谷八段の名局をご紹介できればと思っています!!

 



-将棋, 棋譜解説
-, , ,