将棋 棋譜解説

【追悼】二上達也九段の名局を振り返る 対加藤一二三編

2016/12/02


また将棋界に悲しいニュースが入ってきました。2016年11月1日、将棋連盟元会長であの羽生善治氏の師匠でもある二上達也九段が肺炎のため亡くなられました。84歳でした。

そこで今回はその二上達也九段の名局を取り上げていきたいと思います。

第一弾は加藤一二三九段との対局を取り上げます。

 

二上達也九段と加藤一二三九段

 

二上達也九段は1932年北海道函館市生まれの戦後を代表する大棋士の1人です。

細かいプロフィールや経歴、連盟側からのコメントはこちらからどうぞ。

訃報 二上達也九段

 

  • 入門からA級八段までの最短記録6年を保持
  • あの羽生善治三冠の師匠である
  • タイトル計5期獲得
  • 将棋連盟の会長を14年

と言った具合に将棋界の中では慕われ尊敬された大棋士でした。

今回なぜ二上達也九段と加藤一二三九段との対局を取り上げようかと思ったかというと、それは加藤先生のツイートが発端でした。

 

 

朝日新聞の取材に対しても

  • 二上九段は8歳上のライバル
  • 棋士の中では1番打ち解けた仲だった

と話しており、今回は両者の対局を振り返ってみたいと思い立ちました。

 

第45期順位戦A級4回戦

 

今回取り上げるのは1986年の第45期順位戦A級の4回戦の二上達也九段加藤一二三九段の1局です。

今から30年前になりますが二上九段は1990年に引退していますので棋士人生としては晩年のものになります。

 

この将棋は先手の加藤九段の矢倉からの後手二上九段が早々に仕掛ける展開になりました(図1)

       図1:5五歩まで

実はこの将棋、先手の2筋が捌けてしまい、中盤からはずっと先手の加藤一二三九段優位な将棋でした(図2)

 

       図2:2一歩成まで

ここで同飛は3二金で論外ですし、一見良さそうな同角でも一旦8八玉と入っておいて、3五角→同歩に後手は次の手が困ります。

先手はそこで後手が2九飛車や3九飛車などとやってきても、3四桂→5一玉→7二金のような筋や、8三角→5一飛→3四桂→3三玉→7二角成(変化図1)といった順で勝勢です。


    変化図1:2九飛打から7二角成まで

こうなるとまずいので後手は3五角→同歩→2一飛車と先手の攻め駒を2つ処理しますが、依然として弱い2筋方面からの先手の攻めが続いていきます。

 

108手目後手の二上達也九段が4一香と受けた場面です(図3)

 

      図3:4一香打まで

この時点ではまだ先手優勢です。

ここで4五銀打という普通では見えないような手が飛び出せば以下同銀→4三歩成→同香→4五桂→同香→同角→5四銀打→4四歩(変化図2)となり攻めがつながります。

 

      変化図2:4四歩まで

 

ですがその10手後118手目の図を見てみましょう(図4)

 

       図4:5二銀まで

アレレ??おかしいですよ??と思いませんか?

先手の攻め駒がことごとく剥がされ精算され、先手からの有効な攻め筋がなくなってしまいました。

大駒はすべて後手が持っていますし、2八に龍がいることで攻めのキッカケが作れそうな後手が指せそうな気配が出てきました。

加藤九段がやや攻め手を誤ったのもありますが、うまく受けきった二上九段が挽回し勝負はまだまだわからなくなりました。

ただしダタでは終わらせないのが加藤一二三。127手目に王手飛車取りをかけ再び攻勢に出ます(図5)

 

       図5:7二角まで

 

しかしやはりここで飛車をとっても先手は攻め駒が足りません。じわりじわりと後手にリードを広げられます。

138手目後手の6九銀打の段階で後手優勢がはっきりしているように思えます(図6)

 

       図6:6九銀打まで

 

そして大熱戦の末168手目の9八金を見て先手の加藤一二三九段が投了し二上達也九段の勝ちとなりました(投了図)

 

     投了図:9八金打まで

投了図以下の詰み手順、わかりますか??

 

▲同香△同桂成▲同玉△8六桂打▲同歩(玉が逃げればいずれも9八金まで)△8七銀打▲8九玉△9八金打までです。

 

▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △6二銀 ▲2六歩 △4二銀 ▲4八銀 △3二金
▲7八金 △5四歩 ▲5六歩 △4一王 ▲6九王 △5二金 ▲3六歩 △3三銀 ▲5八金 △7四歩
▲7九角 △6四歩 ▲6六歩 △6三銀 ▲6七金 △4四銀 ▲4六歩 △5五歩 ▲同 歩 △同 銀
▲5六歩打 △4四銀 ▲2五歩 △5四銀 ▲3七桂 △6二飛 ▲4五歩 △5三銀 ▲2四歩 △同 歩
▲同 角 △2三歩打 ▲4六角 △6一飛 ▲4七銀 △5五歩打 ▲7九王 △5六歩 ▲同 銀 △5五歩打
▲4七銀 △7三桂 ▲2四歩打 △同 歩 ▲2三歩打 △同 金 ▲2四角 △3二王 ▲4六角 △2四歩打
▲同 角 △同 金 ▲同 飛 △3三角 ▲3四飛 △1二角打 ▲3五飛 △4二王 ▲2二歩打 △2四角
▲2一歩成 △3五角 ▲同 歩 △2一飛 ▲2三歩打 △同 飛 ▲2四歩打 △2一飛 ▲8八王 △3三歩打
▲2五桂打 △6二金 ▲1三桂成 △2四飛 ▲2五歩打 △2一飛 ▲1四角打 △8一飛 ▲1二成桂 △同 香
▲2三角成 △4九飛打 ▲5八銀 △1九飛成 ▲3四歩 △同 歩 ▲同 馬 △2八竜 ▲3三金打 △5二王
▲4四歩 △同 銀 ▲3六角打 △3三銀 ▲同 馬 △6三金打 ▲4四歩打 △4一香打 ▲4三歩成 △同 銀
▲4二歩打 △同 香 ▲6三角成 △同 王 ▲4二馬 △5二金 ▲同 馬 △同 銀 ▲6八金 △3七竜
▲4四金打 △2七角打 ▲5四香打 △同 角成 ▲同 金 △同 王 ▲7二角打 △6三角打 ▲8一角成 △同 角
▲5一飛打 △6一金打 ▲2一飛成 △8五桂 ▲1二竜 △5六桂打 ▲1四竜 △4四歩打 ▲4七香打 △3四歩打
▲2三竜 △4三香打 ▲3二銀打 △4八桂成 ▲5七金 △5八成桂 ▲同 金 △6九銀打 ▲6八金打 △5八銀成
▲同 金 △7七桂成 ▲同 桂 △3九竜 ▲5九桂打 △6九銀打 ▲6八金 △5八銀成 ▲同 金 △6九角打
▲6七銀打 △8六桂打 ▲4三銀 △同 銀 ▲7九香打 △5九竜 ▲同 金 △9八金打
まで168手で後手二上九段の勝ち

 

名勝負を残してくれた両者に感謝

 

昭和の大棋士がまたこの世を去ってしまうのは寂しいものですが、こうやって昔の棋譜を遡っても「あぁ、いい棋譜だ」と感慨深いものがあります。

また他棋譜も取り上げていければと思っています。



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