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『聖の青春』の村山聖vs羽生善治伝説の名局を振り返る

2016/12/02


聖の青春の映画化により最近再び注目を集めている

村山聖

彼の短い将棋人生の中で最も衝撃を受けたことの1つは羽生善治氏の強さだったといいます。

今回はその村山聖vs羽生善治の名勝負のうち、1992年の王将戦での1局をご紹介します!!

 

1992年12月21日 王将戦挑戦者決定戦プレーオフ

 

今からご紹介するのは、1992年12月21日に行われた

第42期王将戦挑戦者決定リーグプレーオフ 村山聖六段羽生善治棋王

の1局となります。

この年の王将リーグは米長邦雄九段、羽生善治棋王、村山聖六段がそれぞれ4勝2敗で勝ち星が並び、挑戦者決定戦プレーオフが実施されることになりました。

プレーオフ1回戦は羽生善治棋王対村山聖六段

プレーオフ2回戦は米長邦雄九段対1回戦の勝者

となっていました。

つまり、このプレーオフ1回戦に勝って、2回戦の米長邦雄九段に勝てば谷川王将への挑戦権が獲得できるという非常に重要な一戦でした。

特に村山聖六段は初めてのタイトル戦挑戦がかかる1局で絶対に負けられない戦いでした。

先手は村山六段、後手は羽生棋王で対局がスタートします。

 

早い段階での仕掛けから激しい攻め合いに

 

戦型は角換わり腰掛銀模様の序盤でお互いに順調に駒組みを進めていきますが、39手目村山聖六段が4五歩と早々に仕掛け戦いの火蓋が切って落とされます(図1)

 

 図1:4五歩まで

52手目の6五桂(図2)以降、羽生善治棋王はひたすらに攻め続けます。

 

 図2:6五桂まで

6五桂以降は▲6六銀 →△8六歩→ ▲同 歩 →△8八歩打 →▲同 王→ △7六歩→ ▲2二歩打 →△7七歩成 →▲同 銀 →△同 桂成 →▲同 金→ △7六歩打→ ▲同 金→ △7五歩打 →▲7七金 →△7六銀打 →▲6七金→ △5九角打 (図3)とひたすらに羽生棋王の攻めが続きます。

 

 

 図3:70手目 5九角打まで

この時点でどちらが有利かわかりますか??

パッと見ですと攻め駒が多く7筋を突破できそうな後手が有利に見えますが、実はまだ互角です。

先手からは次に7三角と打ち、7二飛車と飛車を寄らせ次に7四歩(図4)と打って飛車角交換を催促します。

 図4:7四歩まで

7三に角がある状態だと、後手は3七角成の筋を消されていて5九に打った角が使えない状態が続いてしまいます。

先手は飛車を手に入れると6一飛車などの筋が生じ、先に2一歩成が実現していれば1筋からの攻めも可能になり、一気に攻勢に出ることができます。

後手の羽生棋王は3七角成を実現させたかったようで、7三飛車と飛車角交換に応じました。

先手に飛車を打たれても攻めのスピードでは後手が勝っているので勝ちきれると判断したのでしょう。

この場面では2二玉と先手の2筋の歩を払う手を指していたほうが良かったように感じます。

 

先手の逆襲がはじまる

 

その後手が進み、先手は6一飛、2一歩成を実現させてからの87手目1四歩と念願の端攻めに乗り出します(図5)

 

  図5:1四歩まで

この端攻めが間に合ったことにより形勢は先手がやや有利になり、後手玉は徐々に追い詰められていきます。

後手もやや反撃に回りますが、以前先手やや有利のまま進んだ108手目、ここで羽生棋王が悪手を指し形勢は一気に村山六段に傾きます。(図6)

 

 図6:3八馬まで

羽生棋王が指した3八馬は、次に6九飛車と回られ、6二飛成の詰めろを自ら呼び込んでしまう形となっています。

以下8七金打と迫りますが、7九玉とかわされ、あと一歩続きません。

その後村山聖六段に的確に攻め寄られ、123手目の2二金打を見て後手の羽生棋王は投了しました(投了図)

投了図:2二金打まで

これは即詰みになっていて、4一玉ですと3二金→同玉→2二飛打→4一玉→4二金→同金→同飛成までの詰み

2二同金ですと、少し長いですが▲同桂成→△同玉→▲1三歩成→△同香→▲同香成→△3一玉→▲1一飛打→△2一桂打→▲同飛成→△4二玉→▲3二金打→△5二玉→▲6二と→△同金→▲4一龍(図7)までの詰みです。

図7:詰み上がり図

 

先手:村山聖
後手:羽生善治
 ▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲7八金 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △4二銀 ▲3八銀 △7二銀 ▲3六歩 △6四歩 ▲6六歩 △6三銀 ▲4六歩 △5四銀 ▲4七銀 △1四歩 ▲1六歩 △9四歩 ▲9六歩 △4四歩 ▲3七桂 △5二金 ▲5六銀 △4一王 ▲6八王 △7四歩 ▲7九王 △3一王 ▲5八金 △7三桂 ▲2五歩 △3三銀 ▲4五歩 △同 歩 ▲3五歩 △4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩打 ▲2八飛 △6五歩 ▲同 歩 △7五歩 ▲1五歩 △6五桂 ▲6六銀 △8六歩 ▲同 歩 △8八歩打 ▲同 王 △7六歩 ▲2二歩打 △7七歩成 ▲同 銀 △同 桂成 ▲同 金 △7六歩打 ▲同 金 △7五歩打 ▲7七金 △7六銀打 ▲6七金 △5九角打 ▲7三角打 △7二飛 ▲7四歩打 △7三飛 ▲2一歩成 △同 王 ▲7三歩成 △3七角成 ▲6一飛打 △2二王 ▲2九飛 △7七銀成 ▲同 金 △7六桂打 ▲同 金 △同 歩 ▲1四歩 △7七歩成 ▲同 王 △3三王 ▲3四歩 △同 王 ▲2五銀打 △4三王 ▲4七桂打 △5一金打 ▲3五桂打 △4二王 ▲3四桂打 △3一王 ▲9一飛成 △7六歩打 ▲同 王 △7五歩打 ▲6七王 △7六角打 ▲7八王 △3八馬 ▲6九飛 △8七金打 ▲7九王 △5八角成 ▲6二飛成 △5七馬 ▲6八香打 △6一歩打 ▲同 竜 △同 金 ▲同 竜 △5一飛打 ▲同 竜 △同 金 ▲2二金打 まで123手で村山聖六段の勝ち

 

激しい攻め合いを村山聖が制した1局だった

 


出典:https://www.amazon.co.jp/

村山聖当時六段が早々に仕掛けてからお互いに激しい攻めをみせ続け、終盤までどちらが勝つかわからない状況でしたが、ややリードを作っていた村山六段が羽生棋王をねじ伏せて勝ち切るという非常に力強い将棋でした。

この1局に勝った村山聖六段は、次のプレーオフ2回戦で米長邦雄九段に勝ち、谷川王将への挑戦権を獲得し、見事タイトル戦初挑戦を果たしました(結果は0-4のストレート負け)

タイトルを取ることはできませんでしたが、この羽生さんとの1局では非常に熱いものが見れたと思います。

彼の生き様は棋譜に顕れているような気がしてなりませんね!!



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