コラム 将棋

人工知能の発達で将棋の魅力は失われるか~升田幸三の名言に学ぶ~

2016/12/02


今目下で急成長を遂げている人工知能。この人工知能が将棋界に与えた影響は非常に大きなものです。

その人工知能の発達によってプロ棋士を完全に凌駕する領域にまで達したとき、将棋というものの魅力は果たして失われてしまうのでしょうか。

今回は将棋ソフト関連の情報のおさらいを行い、升田幸三先生の名言を元に将棋の本質を探りながら将棋の魅力について考察します。

 

 

将棋と人工知能

 

将棋と人工知能(将棋ソフト)との繋がりは切ってはきれない存在です。

一昔前ですと将棋ソフトはプロ棋士はおろか、アマチュア有段者にも敵わないレベルの代物でしたが、15年前ほど前からでしょうか、徐々に進化を遂げてきてアマチュア有段者ともいい勝負ができるレベルにまで到達しました。

ですが、さすがにプロ棋士には及ばないだろうと思われていたのですが、bonanzaの登場以降将棋ソフトの発展は著しく、あっという間にプロ棋士に追いつき、もしかしたらもうプロ棋士が勝てない領域に行ってしまったのではないかとまで言われています。

渡辺明竜王とbonanzaとの対局が2007年3月でしたのでそれからもう10年近く経っているのですね…時が流れるの早い。

 

その将棋ソフトとプロ棋士との対局としては、現在ではドワンゴ主催で叡王戦(将棋ソフトと対局する棋士を決めるトーナメント形式の棋戦)・電王戦なる将棋ソフトとプロ棋士が対局するための棋戦が行われています。

みなさんは電王戦・叡王戦についてはもう詳しくご存知かと思いますが、このことについてあまり詳しく知らないという方向けに初心者にもわかりやすいように書かれた記事がありましたので下記事をご覧になってみてください(結構誤字脱字が多くてオイ!!という感じですが内容は簡潔でいいと思います)

 

電王戦・叡王戦をもっと楽しむ将棋講座 ―― プロ棋士と将棋AIのこれまでとこれから

 

プロ棋士の遠山雄亮五段もこの記事を薦めていました

 

電王戦は最初は第1回将棋電王戦として2012年から始まり2015年の将棋電王戦FINALまで4回行われまして、2016年から第1期電王戦としてリニューアルしました。

2016年からは叡王戦という将棋ソフトと対戦する棋士を決めるトーナメント形式の棋戦の勝者が電王戦としてコンピューター将棋の頂点に立ったソフトと対戦するという形式になりました。

 

この電王戦が始まる時は

  • 最近将棋ソフトがプロ棋士並に強くなっている
  • まだプロ棋士に対する勝率は高くないだろう
  • プロ棋士と最新ソフトとの対局が見たい

などのファンの声を受けて米長邦雄永世棋聖が英断して始まりましたが、予想以上にソフトが強かったことが世間に知れ渡る結果となってしまいました。

 

 

ソフト>人間なのか

 

電王戦シリーズを通して見てみると、2015年の電王戦FINALでは人間側が3勝2敗と辛うじて勝ち越しましたが、他の年はプロ棋士の負け越しです。

2016年の第1期電王戦では初代叡王の山崎隆之八段を全く寄せ付けない内容で勝利し

 

将棋もソフトが人間を追い越した

 

などと報道されました。(この第1期電王戦の直前にgoogleのAlphaGoがイ・セドル氏に4勝1敗で勝利したことを受けて”将棋も人工知能に勝てない”といったように報道された)

 

最初の電王戦シリーズではプロ棋士が負けた時は相当騒がれましたが、今では以前ほどは騒がれなくなったような気がします。それは

将棋ソフトはプロ棋士より強い

ということを暗に悟っているからでしょう。

実際プロ棋士らでも

 

先崎学九段:将棋ソフトより強いと思っているプロ棋士はいない

千田翔太五段:羽生さんの対ponanzaの勝率は0.5%くらい

 

などと ソフト>将棋 であることを既に認めている雰囲気です。

 

将棋は対話=人同士の将棋の魅力は失われない

 

現在でもプロ棋士を上回るほどのレベルにある将棋ソフトがこれ以上に強くなったとしたらもうプロ棋士は不要で将棋というゲームが終わったものとして廃れていってしまうのでしょうか。

その答えは否だと思います。

確かに強すぎる将棋ソフトとプロ棋士が対局してボコボコにされるのを見続けたらそれは面白くありません。

ですが将棋は人と人で行われるある意味「対話」のようなものです。

故升田幸三先生もインタビューの中で

 

  • 人生は対話。対話のない人生は人生ではない
  • 将棋は創造だ
  • 棋士は本来はいらない職業だからプロは面白い将棋を指さねばならない

 

とおっしゃっています。

これは非常に深い言葉で今後の人工知能との付き合い方を考える上で非常に重要だと思います。

指し手を読むだけではなく相手の意図を読み取る、相手の読み筋・考えに対して自分の読み・考えの手をぶつける、それの繰り返し。

1手1手が深い駆け引きの上に行われています。

対局が終わった後に感想戦を行うのも

 

自分はここでこういう意図で指した

いや私はこっちの筋の方が有力だと思った

 

とお互いの読み筋や読みを言い合ういわば「対話」です。

しかし人工知能ですと相手がどの人であろうと、淡々と指し手を計算し指し続けます。

また、人間で行われるような感想戦はできません。ソフト側でその場面場面の評価値と指し手予想を教えてくれますが、それはソフト側からの一方通行のアウトプットなので「対話」とはなりません。

また、終盤の難解な場面でどちらが勝つかわからない場面での1手1手のハラハラした展開は人間同士でしか生まれません。

※そういう場面でソフトの評価値が揺れるのが見れることによってより局面が揺れ動いているということがわかるのでその時のソフトは非常に有用ですね。

もちろん将棋ソフトがプラスになる面も多くあります。実際居角左美濃などのソフト発の新しい手が出てきて将棋模様が変わりました。

そのように将棋の発展のためにうまく人工知能を活用すれば新たな世界が見えてくるかもしれません。

 

 

最後に

もちろん将棋ソフトが強すぎたらプロ棋士の存在を脅かすというのはあるとは思いますが、人間ならではの指し手、むしろ

 

ソフトでは指せない手

 

を人間が創造し続けることによってその魅力を続ける時代になるのかもしれません。


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